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都市伝説 - WinChalow

2004-12-20 Mon

六本木巨大ビル


某巨大ビルでの遭難者[2004-12-09]がまたひとり増えていた。
「六本木ヒルズ(通称:キルビル)で遭難」
http://my.casty.jp/kirik/html/2004-12/12-20-14447.html

ふつう迷うよね。J-waveの番組で元レーサーのT屋圭一氏もよく迷うとバカにされていた。地下に何か埋まっていて磁気異常が生じているのだろうか!?

でもビルが建つ前は、幽霊の噂こそあれ、真っ昼間に道に迷うようなところではなかったのだ。バカ建築の威力こそ絶大なれ。携帯の電波も上の方にはとどかないらしい。どういう仕掛けになってるんだろう?
(2004-12-20 15:51:01)

2004-12-09 Thu

鳥居坂異聞 その3


六本木の巨大ビルに入っている某ベンチャー企業の名称を、右から逆に読むと「悪魔の十字架」という意味の英語になるらしい。

そうでなくても悲惨な事故で有名になったビルである。そのビルに到着してしまった。そう思うとなんだか胸騒ぎがした。

見上げてみても、美意識とは無縁な意匠である。別にかまわないけど。

中に入ってみる気もしないので来た道を直進した。いや、しようとした。このビルができるまえは、三叉路に横断歩道があったのだ。

ところがガードレールにはばまれて直進できない。左岸へわたることもできない。どうなってるんだ?

見回すと、歩行者はエスカレータで地下にもぐるようになっている。オッケー、グレイト。地獄へ堕ちろ、というわけか。ベイベー、恐怖の大王がお呼びだぜ。

しかし自転車ではエスカレータにも乗れない。にっちもさっちもいかない。しかたないのでガードレール沿いに進むと、ご丁寧にも自転車置き場になっていた。

ここに自転車を置いてどうしろというんだ、メーン?

さらに進むとオートバイ置き場になっている。もっと進むと、一時停止とか書いてある。

一時停止というのは、その先から優先道路に出る場合だ。ようやく進めるか、と思って前に出ると行き止まりである。絵に描いたようなバカ設計だ。

作家の原田宗典氏によれば、六本木というのは「んもう果てしなくバカを究めた街」なのだ。(『東京見聞録』)原田氏の六本木評は、見開き2頁に「バカ」が20回登場するほどの念のいったものだ。

もともと「六本木」自体が麻布の七不思議のひとつである。六本の木があったわけでもないのに六本木とはこれいかに、ということだ。地名からしてバカバカしい。

引き返すと振り出しに戻った。

強烈なデジャヴュにおそわれる。前にもこんな事があった。そうだ。このビルがまだ工事中のころ、芋洗い坂を下ったあと六本木通りに戻ろうとしたらたどりつけなくて、ひどいめにあったのだ。そのころは工事中だからしょうがないかと思っていた。

今になって分かったのは、どうやらこのビルは「めざすところにたどり着けない」が設計コンセプトらしいということだ。なんという恐ろしい陰謀だろうか。

それにしても、ビルが建つ前は直進できたんだから、車を下に通して、上は平らな歩道にすりゃいいだろう?さんざんここいら穴掘ってたのは、なんのためだ?死体でも埋めてたのか?

しかたなくもう一度トライする。情報科学ではバックトラックといいますね。理論通り枝刈りして、いやそれほど複雑ではないのだが、ガードレールにそって下っていくと、きれいにタイル張りされた道がトンネルに向かっていることが分かった。なにがなんでも地獄行きか。排気ガスで死にそうだ。

道は分かったけれども、そっちへいくと麻布十番までいってしまう。私は、あと200メートルほど直進したい。っていうか、ふつうそうだろ?ブラザー、ミーは六本木通りをまっすぐ行きたいだけなんだ。

自転車が通れないということは、車いすの人もダメということだ。いまどき、これほどのバリアー・フルな建築もめずらしい。世界遺産になれるかもしれない。

どうにもならないので、道なりに進んだ。そっちがそう出るならこっちにも考えがあるぞ。

なさけないことに報復のアイデアが浮かばない。すっかりバカにそまっちまったぜ。あれよあれよと惰性で下っていくと芋洗い坂の下に合流した自分を発見した。もうモノを考える力もない。

すごすごと芋洗い坂を上る。坂の上から次々にバカが転がり落ちてくる。とんでもない大回りだ。有酸素運動になっていいけど。ルンルン。

なにはともあれ、このビルのおかげで六本木のバカ度が急騰したことは何人もあらそえぬ事実であろう。東京に特大のバカ建築ができていた。そう思うと、私はちょっぴりうれしくもさえあった。

バカを究めるとは、なるほどこういうことなのか。

[つづく]
(2004-12-06 23:26:02)

2004-12-07 Tue

鳥居坂異聞 その2


[承前][2004-12-05]

建物の間のわずかなすきまから、高架橋が見えた。霞町の交差点だ。突然、車の喧噪が思い出のようによみがえる。

六本木からだいぶ坂を下ったところに出たわけだ。奇妙な道があるものだ。それにしてもひどく遠回りをしたことになる。なんだかキツネにつままれたようだ。

いまどきは西麻布とかいう地名になっているが、霞町になるその前は「墓地下」といわれていた界隈で、貧乏下宿の町だったらしい。

目指している六本木の巨大ビルは、昔の材木町から桜田町あたりである。左手は竜土町といって、寛永年間に竜が降りて昼でも暗闇になったと伝えられるところだ。

そのせいで道がのたくっているのだろうか。高架のおかげで、昼なお暗い谷底であることは当時と変わりない。

フランス料理の竜土軒があるのは、少し登った左手のあたりである。明治時代には島崎とか藤村とかの錚々たる文士たちが会合を開いていたことで有名な店であったが、今の店がある場所とは異なるそうだ。名探偵・明智小五郎が事務所を構えていたのも、たしか、このあたりだ。

などとあふれでる知識と教養に酸素消費量を奪われながらも、巨大ビルをめざして右側の歩道をトロトロ登る。ママチャリに抜かれた。

なぜか金髪の美女が後ろ向きで道をふさいでいる。ふりかえると顔がない!? いや、単なる厚化粧か。

驚いて追い抜かすと交番がある。警官が面をあげると、やはり顔がない。いや、これはガラスが光ったせいだ。きっとそうだ。それにしても妙だな。ジブリの狸合戦みたいだ。

後で思えば、これは何かの予兆であったのだが、そのときは登るのに一所懸命で考えている余裕がなかった。

坂を上りきったところが巨大ビルの入り口だった。

本当の恐怖は、そこからはじまった。

[つづく]
(2004-12-07 23:55:55)

2004-12-05 Sun

鳥居坂異聞 その1



東京は坂の町である。

この日は12月には稀な台風一過で、昼過ぎには真夏日となった。

自転車で赤坂・青山・六本木をまわってみよう。たまには都会を走るのもいいかもしれない。季節外れの暑さのせいか、そんな気分になる昼下がりであった。

赤坂見附で車から自転車を降ろす。赤坂見附から青山一丁目までは、バイク・メッセンジャー達を苦しめることで知られる登りである。ダンシングでひょいひょいひょいと登っていく。

鍛え抜かれた我が大腿2頭筋と、国産自動車が軽く2〜3台は買えてしまう私のロードレーサーにとって、この程度の登りはほとんど平地と変わりない。カーボンファイバーの乾いたキックバックを感じながら、快適に加速していく。

この下を地下鉄が通っているのだが、ここを登って終点の渋谷までいくと、地下鉄のくせにビルの三階の高さに出現する。

地下鉄たるものが、あまりの高空に出現するわけにもいかぬであろうから、地下でできうるかぎりの下降をこころみてはいるはずだ。それでもついに地下にはもどれず、ハズカシながらの空中出現となる。まあそのくらいの坂なのだ。

登ったあとは、でれでれと平らな道を外苑前まで進む。

人どおりの多いベルコモの交差点を渡ってなお進むと、左に入る狭い路地から六本木の巨大ビルが見通せるところがあった。

このあたりは建込んでいて、遠くが見通せることはめずらしい。見るところ、どうやら六本木まで水平な一本道のようだ。

ん?おかしい。

そんな道はないはずだ。いくら台風一過でも、道が通るはずもない。

今の人は知らぬであろうが、昔はこのあたりは、よくキツネやタヌキが出て人をたぶらかしたものである。青山といえば、荒涼たる野原に墓地があるだけの場所だったのだ。こんなところにに住みたがるのは、そういう歴史や地霊を知らないイナカモンだけだろう。

しかし真っ昼間からタヌキがビルに化けて見せることもあるまい。そう気をとりなおして、計画どおり六本木に向かうことにした。

車の通りもなく、快適に進む。静かな郊外のようなサイクリングロードである。国道の喧噪がまるで嘘のようだ。

え、まるで嘘?

最初のうちは、絵にかいたような高級マンションが建ち並び、駐車場にはこれまた高そうな、しかし見たこともないスポーツカーがとめてある。

シートがタヌキの毛皮張りだぜ。豪勢じゃねえか。

こころなしかケモノの臭いがしてくるが、気にしないで、どんどん進む。進むにつれて、なんだかちょっと次元が歪むような感覚におそわれる。

ふと気が付くと道の両側は古い木造の二階屋ばかりだ。昭和時代の景色だな。これは。

いやしかし。長年の経験からすると、ちょっとまずいぞ。潜在意識はアラート・モードに切り替わる。

後ろを振り返ると、国道はもう見通せない。道の両側は二階屋ばかりだというのに、六本木の巨大ビルも見えなくなった。い、いったいどこだ、ここは?

愛車はなんの抵抗もなく加速していく。道は下りながら右にゆるやかにカーブしている。

音がしないので、夢の中のようだ。真っ暗なトンネルを走っていると、いつしか上下左右の感覚がなくなるものだが、そんな空間識失当におそわれそうだ。

しまった。やられたぞ、これは。

[つづく]
(2004-12-06 03:39:57)